前回は、「いかなる座標系においても真空中では光速度は不変」であるという、光速度不変の原理について触れた。では、光速度が不変であることによって起こ る不思議な現象とはどういうものなのか。今回は、光速度不変の原理に基づいて導き出される不思議な世界、その中でも特に興味深い(と私が思う)「時間の遅 れ」をご紹介しようと思う。
「宇宙船で何年も旅をして戻ってくると、地球では何世紀も経っている」、こんな話を聞いたことはないだろうか。ウラシマ効果とも呼ばれるこの現象は、光速 度が不変であるが故に引き起こされるのである。「なんでやねん!?」という突っ込みが四方から聞こえてきそうだが、本当だからしょうがない。しかし、一口 に時間が遅れると言ってもいまいちピンとこない。そこで、具体例として、超高速で移動する宇宙船内でカップラーメンが出来上がる間に、地球上でどれだけの 時間が経つのかを見てみよう。
ちなみに、どのようなスピードであっても、移動している限り時間の遅れは発生するのだが、日常生活で体験できるような速度ではその影響はあまりに小さい。 時間の遅れを実感できるほどに差が出てくるのは、移動速度が光速の95%、およそ秒速28万5千kmを超えてからである。ちなみにこの時点で、宇宙船で カップラーメンができる間に、地球では9分ちょっと経つ計算である。
また、時の流れは、光速の99%を超えたあたりから、劇的に遅くなる。99%では、3分が21分になり、99.9999999%で4日半ほど、99. 999999999999%になるとカップラーメンを待っている間に次のオリンピックが始まってしまう。99.9999999%と99. 999999999999%では、秒速にすると秒速30m程度しか差がない。秒速30mと言えば、くしゃみより遅い。しかしそのほんの少しの差が命取りで ある。将来、宇宙旅行に行ける日が来たとしても、飛ばし過ぎに注意しないと本当に危険である。10日程度の小旅行のつもりで帰ってきたら、長期無断欠勤で 会社はクビになり、ローンの滞納で家は競売に出され、留守を任せた子供が高校を卒業して大学生になってしまっている可能性があるのだから。
さらに言えば、上の数字はあくまで宇宙船内の3分を基準にしている。時間の遅れは「比率」なので、宇宙船内で過ごす時間が長ければ、その分地球での時間は どんどん進む。仮に、先ほどの光速の99.999999999999%というスピードで、10年間宇宙をさまようとすと、その間に地球では707万年も経 過してしまう。こうなると、帰ってこない方がましだろう。帰ったところで、700万年前の宇宙飛行士のことなど誰も覚えてはしない。ましてや、人類がそこ まで長い間絶滅せずにいられるか、個人的にはかなり疑問である。
色々と例え話が続いてしまったが、最後に「ひたすら加速し続けたらどうなるか」というのを一つ。先ほどのような宇宙船で、「宇宙船内の時間で」1年経つた びに、光速との比率が、0の後ろに9が一つ増えるような加速をするとしよう。つまり、1年で光速の0.9倍(90%)、2年で0.99倍(99%)、3年 で0.999倍(99.9%)といった具合だ。
このペースで、「船内時間で」60年間宇宙を旅し続けると、地球上では3E29(3の後に0が29個)年以上経過することになる。ちなみに、宇宙開闢から 現在までで130億年、1.3E10経っていると言われているので、その180億*180億倍の時間が経過することになるのである。そこまで行くと、宇宙 ですら存続しているか微妙である。
さて、この時間の遅れ現象だが、実は実際に観測されている。観測と言っても、宇宙船を飛ばしたわけではない。同じウチュウセンでも、宇宙空間から地球に飛 来する微粒子である、「宇宙線」から観測されたのである(う~ん、ひどいダジャレだ…)。その観測方法を大まかに説明するとこうなる:
・素粒子の中には、出現とほぼ同時に消滅してしまう、地球上での寿命が何万分の一秒しかないものが存在する。
・そうした素粒子は、宇宙線の中にも含まれている。
・宇宙線に含まれるそれらの素粒子は、超高速で移動している。
・超高速で移動している場合、素粒子の寿命が延びる
=>素粒子の時間の流れが遅くなっている
といった具合である。
また、超高速で移動すると、時間の流れが遅くなる以外にも、物が縮んだり、質量が増えたりといった現象も起こる。言うまでも無く、それらは光速が不変であるが故に引き起こされるのである。まさに、「スモー○ライト」や「タイム○シン」の世界だとは思わないだろうか。

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